CIMとBIMの違いや、建設現場での活用方法がよく分からないということはありませんか?
そこで、今回は建設業で用いられるCIMとは何かやBIMとの違い、導入メリット・課題について解説します。
この記事を読めば、CIMの基本概念から具体的な活用事例、そして建設業における導入の成功ポイントまで理解できるので、ぜひ最後まで読んで学んでください。
CIMとは
CIM(Construction Information Modeling)とは、土木構造物やインフラ整備の分野において、3次元モデルを中心に設計・施工・維持管理までの情報を一元管理する手法です。
従来の2次元図面では表現しきれなかった地形や構造物の複雑な形状を直感的に把握でき、干渉チェックや数量算出なども高精度で行えます。
また、CIMはBIM(Building Information Modeling)の土木分野版ともいえる存在で、対象範囲が橋梁、道路、ダム、河川などのインフラ施設に及びます。
これにより、現場での情報共有が容易になり、施工ミスや手戻りの削減が期待できます。
CIMとBIMの違い
BIMは建築分野で用いられるデジタルモデリング手法のことですが、BIMが主に建築物を対象とするのに対し、CIMは道路、橋梁、ダム、トンネル、河川構造物などの土木分野を対象とします。
建築物は比較的閉じた空間で構成されるため、BIMでは建物内部の構造や設備情報が重視されます。
一方CIMは、地形や周辺環境との関係が大きく影響するインフラ工事に適しており、広範な空間や複雑な地形データを扱う必要があります。
この違いは、利用するソフトウェアやモデリング手法にも反映されます。
例えば、CIMでは測量データやドローン計測データを統合してモデル化することが多く、設計・施工・維持管理の各段階で異なる専門分野のデータが統合されます。
モデリングに活用する情報の違い
BIMモデルは建築物内部の構造や設備情報に重点を置きますが、CIMモデルは地形や地質といった外部環境データも含めて構築されます。
土木構造物は自然環境に直接影響を受けるため、地盤条件や水位変動、地質分布などの情報が重要です。
CIMでは、これらのデータを3Dモデルに統合することで、施工計画の精度向上やリスク低減につながります。
例えば、河川護岸工事では水流シミュレーションを行い、洪水リスクを事前に評価できます。
一方でBIMでは、こうした自然環境データの統合は必須ではなく、主に建築物固有の情報に焦点が当てられます。
この情報の範囲の違いが、両者の適用領域や得られる成果に直結します。
建設現場でCIMを導入するメリット
CIMを導入することで、完成イメージの共有や情報管理の効率化、設計ミスの削減、積算精度の向上といった多くの効果が期待できます。
ここでは、それぞれのメリットを具体的に解説します。
完成イメージの可視化で関係者間の認識共有
CIMを活用すれば、完成後の構造物や施工工程を3Dモデルで可視化できます。
従来の2D図面では把握しづらかった空間的な関係や周辺環境との調和を、誰でも直感的に理解できます。
これにより、設計者・施工者・発注者など異なる立場の関係者間で共通認識が生まれ、意思決定が迅速になります。
特に公共事業では、市民説明会や行政との調整において視覚資料としての説得力が高まり、計画段階から合意形成がスムーズに進む効果があります。
また、現場作業員にとっても作業工程や施工手順が分かりやすくなり、施工品質の向上につながります。
情報共有の効率化(設計・施工・維持管理の一元化)
CIMモデルには設計図、施工手順、使用材料、完成後の維持管理情報まで統合できます。
これにより、工程ごとに異なる図面やデータを作成・更新する必要がなく、全関係者が同じ情報をリアルタイムで参照できます。
施工段階での仕様変更や現場状況の反映も即時に反映され、情報の齟齬による手戻りを防ぎます。
維持管理の段階では、構造物の部材位置や劣化状況をモデル上で確認でき、補修計画の立案が容易になります。
結果として、ライフサイクル全体を通じた情報管理が可能となり、業務効率が飛躍的に向上します。
設計ミスや手戻りの削減によるコスト削減
CIMの3Dモデルは、設計段階での干渉チェックや施工シミュレーションを可能にします。
これにより、図面上では見落としがちな部材同士の干渉や寸法不一致を事前に発見できます。
さらに、施工中に設計ミスが発覚して手戻りが発生するリスクを大幅に減らせます。
手戻りの削減は、直接的な工事費削減だけでなく、工期短縮や人件費の節約にもつながります。
また、施工前に現場環境に合わせた計画を立てられるため、資材や重機の配置も最適化でき、無駄なコストを抑制できます。
公共工事においては、予算超過や工期延長のリスク管理にも効果的です。
積算精度の向上
CIMモデルからは、部材の数量や寸法、施工範囲を自動的に算出できます。
これにより、従来の手作業による積算で発生しやすい数量誤差を大幅に減らせます。
また、設計変更が発生してもモデルを更新するだけで積算結果も即座に反映され、見積精度が向上します。
積算の正確性は発注者と施工者双方の信頼関係構築にも寄与し、契約後の追加費用請求やトラブルを防ぎます。
さらに、過去のCIMデータを蓄積すれば、将来の類似案件での積算効率が高まり、見積作業の標準化・迅速化にもつながります。
このように、積算の高精度化は全体的なプロジェクトマネジメントの質を底上げします。
CIM導入のデメリットと課題
CIMは多くのメリットを持ちますが、導入や運用には費用や人材面でのハードルも存在します。
ここでは、CIMを建設現場に導入する際に直面しやすい代表的な課題を整理します。
専用ツール導入や運用にかかる費用
CIMを活用するためには、3Dモデリングや情報管理が可能な専用ソフトウェアやハードウェアを導入する必要があります。
これにはライセンス料や更新料、ストレージなどのインフラコストが含まれ、初期投資額が大きくなる傾向があります。
また、プロジェクトの規模や業務内容に応じて追加機能や拡張サービスを利用する場合、ランニングコストも継続的に発生します。
特に中小規模の建設会社にとっては、これらのコスト負担が大きく、導入判断を慎重にする要因となります。
さらに、ツール間の互換性確保や最新バージョンへの対応にも追加費用がかかる場合があり、長期的な費用計画が不可欠です。
技術者不足・教育コストの高さ
CIMを効果的に活用するためには、モデリングスキルやデータ管理、3D設計の知識を持つ人材が必要です。
しかし、建設業界全体でこうしたスキルを持つ技術者はまだ少なく、人材不足が課題となっています。
また、既存社員にCIMの操作や運用方法を習得させるためには、外部研修や社内トレーニングが必要となり、そのための時間的・金銭的コストが発生します。
特に現場作業員や設計者が従来の2D図面中心の業務フローに慣れている場合、新しいツールへの適応には一定の時間がかかります。
このため、導入初期は生産性が一時的に低下する可能性もあります。
従来システムからの移行負担
CIM導入時には、従来のCADデータや紙図面を新たなCIMモデルに変換・統合する作業が必要です。
この移行プロセスは時間と労力を要し、特に過去の膨大な図面やデータ資産を持つ企業では負担が大きくなります。
また、既存システムやワークフローとの互換性がない場合、業務プロセス全体を見直す必要があり、社内の調整やマニュアル改訂も発生します。
さらに、移行期間中は旧システムとCIMを並行運用するケースも多く、データの二重管理や入力ミスのリスクが高まります。
こうした負担を軽減するためには、段階的な導入や移行計画の策定が不可欠です。
CIM導入を成功させるポイント
CIMをスムーズに導入し、現場で効果を最大限に発揮するには、計画的な準備と段階的な運用が重要です。
ここでは、社内教育、試験運用、外部パートナーとの連携という三つの視点から成功の鍵を解説します。
社内でのCIM担当者育成・研修計画
CIMの活用には、3Dモデリングやデータ管理のスキルを持つ人材が不可欠です。
そのため、導入初期段階で社内にCIM担当者を選任し、計画的な研修プログラムを実施することが重要です。
研修は、基礎的なツール操作から始め、徐々に設計・施工・維持管理に応用できるレベルまで段階的に進めます。
また、外部の専門講師による実務研修や、他社事例の共有会を通じて最新情報をキャッチアップできる体制を整えることも効果的です。
さらに、現場の声を反映させるため、CIM担当者が設計者や施工管理者と密にコミュニケーションを取れる環境づくりも欠かせません。
こうした人材育成は、単発ではなく継続的に行うことで、CIM運用の質を高める基盤となります。
BIM/CIM対応の設計事務所・施工会社との連携
CIM導入の効果を最大化するには、社内対応だけでなく外部パートナーとの連携も重要です。
特にBIM/CIMに対応した設計事務所や施工会社と協力することで、モデルの精度やデータ活用の幅が広がります。
外部パートナーは最新の技術や事例を持っており、それらを取り入れることで社内のノウハウ不足を補えます。
また、プロジェクト開始時に役割分担やデータ共有ルールを明確化しておくことで、作業の重複や情報の齟齬を防げます。
さらに、パートナー企業から得られるフィードバックは、自社の運用改善にも直結します。
CIMは単独で完結するものではなく、多様な関係者と情報をつなぐ仕組みであるため、信頼できる外部連携体制を築くことが導入成功の大きな鍵となります。
まとめ
今回の記事では、建設業におけるCIMについて解説しました。
導入時は小規模案件で試験運用し、社内のスキルを着実に高めましょう。
外部パートナーとの連携体制を早期に整えることも成功の鍵です。
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